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演題-発表者名の印刷 2

ポスター発表に限らず「頭書き」で気になったことを、2020年10月に開催された第30回 日本医療薬学会年会にて発表しました。

 「 頭書き」とは、演題-発表者名等を記載した部分を指します。

 

 さて…私が実際に学会で見かけたポスターの頭書きは、ほとんどが次の3パターンです。



上から、A・B・Cとして、どれが最も理想的でしょうか?

 

研究の最終成果物、それは論文ですよね。

長い研究過程のゴールを論文(掲載)とすると、学会発表で研究の一部を報告することは、将来の論文の一部を発表すると言っても良いのかもしれません。

とすると、背景・目的から方法、結果、考察という話の流れはもちろんのこと、演題や発表者名、発表者の所属の記載方法も論文に倣うべきだと考えられます。

 

 



この画像は、私達が執筆を行った論文です。投稿先は薬局学会の「薬局薬学」です。

これが医療薬学でも、日本薬剤師会雑誌でも、薬学雑誌でも…各順番は同じです。

 

  1. 最上段:演題
  2. 中断:発表者(執筆者)名
  3. 2の所属

ということで、冒頭の画像で言えば一番上のAが最も理想的と考えます。

 

では、なぜBやCのような「理想的でない形式」の頭書きが横行しているのか?

ということで、実際の学会でどの程度の割合で存在しているのかをカウントしました。

また、発表者に論文の執筆経験があるのかも調べました。

なおこの研究では、先程の理由から論文と同じ順番での記載を「正しい書き方」として扱いました。

 

発表者名と所属の順番を間違って書いているポスターが、半数近い状態でした。

これには正直驚きました。

 

そして、通常はLast author (発表者名の記載が一番最後)が指導者的な立場にある研究者ですので、1st author と Last author の名前をそれぞれ J-STAGE という論文検索サイトで検索し、執筆した論文の数を確認しました。

その結果が下表です。

1st author の論文執筆数では、頭書きの正誤について有意差は認められませんでした。

ただし、Last suthor の経験は有意差を持って影響が出ていました。

1つの見解として、Last author が経験を積んでいると、頭書きについて正しい指導が受けられる傾向にあると考えられそうです。実は、COIの記載についても同様の結果が出ています。

 

頭書き一つとってもそうなので、Last suthor が経験豊富だと、とても貴重な指導を受けられる…と言えそうです。

当たり前のような内容ですが、改めて数値として確認できたことは私にとって大きな意味がありました。

 

ということで、なぜ「誤った記載方法がなぜ横行しているのか」といえば、指導的な立場にある薬剤師の論文執筆経験が不足していることが考えられます。また、指導的な立場に立てる経験豊富な薬剤師に教わっていない、というケースもあるのではないでしょうか。仲間だけで研究を実施し、右も左もわからないまま、なんとなく周りを見ながら進めてきた…それが複数回続いた場合などは既に「当たり前」になっていて、まさか自身の書き方が間違っているなどとは夢にも思わないでしょう。

 

 

そして、「誤った記載方法がなぜ横行しているのか」の答えは、実はもう一つあると考えています。

 

実は、学会の要旨集に記載されている「例」がおかしいのです。

これを見ると、誰でも「演題名の下は所属、その次に発表者名」となりますよね。でも英語表記では名前が所属より先に記載されます。

 

論文や学会発表は、西洋諸国より入ってきた文化であると教えて頂いたことがあります。したがって、国際的な発表の場に倣うことがスタンダードなのだと考えます。

 

なぜ日本語になると所属が先に来るのか…考えられる原因としては次が考えられます。

  1. 要旨集等の当該ページを作成した人が、学会発表や論文発表に馴染みがない
  2. 要旨集等の校正を担当する人が、学会発表や論文発表に馴染みがない
  3. ある学会で昔作られた説明を、他の学会も深く考えずに踏襲し、現在に至る

もちろん他にもあるのでしょうが、これら3項目のいずれか、あるいは複数が重なったまま悪しき慣習となってしまっている可能性があるのでは…と疑っています。

 

 

経緯はどうあれ、学会や発表という習慣が根付いた経緯や、論文が最終成果物であることなどを総合的に考えると、

  1. 演題名
  2. 発表者(研究者)名
  3. 2の所属

 

であるべきだと考えます。

 

…そして、学会の要旨集等に記載されている「発表要項」などを担当される方は、ぜひ本件についてご確認と修正をお願いしたいと思っています。


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